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■ 原マンション管理士事務所
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◎マンション管理問題判例
7.4 マンションの漏水事故と損害賠償
弁護士 千葉 悟 (千葉悟法律事務所)
東京地方裁判所 平成4年3月19日判決
マンションにおいて、階上の部屋のベランダにたまって溢れた雨水が室内に浸入し、さらに階下に漏水して、階下の居室及び家財等が損害を受けたとして、その被害者において、階上の部屋の所有者と賃借人らに対して、民法717条。
工作物責任の責任者は、第一次的には占有者です。しかし、占有者が損害の発生を防止するに必要な注意を払っていたことを証明したときは免責され、第二次的に、所有者が責任を負うことになります(所有者には免責は認められず、無過失責任をおわされています。)。
また、水漏れの原因がどこにあるかわからない場合、区分所有法は、欠陥は共用部分にあるとする推定規定を置いています(区分所有法9条)。
共用部分が原因である場合は、区分所有者全員が共同で責任を負うことになります。つまり、管理費等から賠償金が支出されるということになります。
3. 本件事案の概要及び当事者の主張
本件事案は、階上のベランダの排水口が詰まって浸水したものであり、本件における漏水事故の被害者は、階上の部屋の所有者及び賃借人で部屋を占有している会社とその代表者に対して、それぞれ民法717条の臭工作物責任に基づき損害賠償を求めました。
これに対して、階上の部屋の所有者は、ベランダにサンルームが設置されていることが原因で本件事故が発生したものではなく、本件ベランダには構造上の瑕疵は存在しないと主張し、排水口の清掃管理を怠った賃借人らに責任があると主張しました。
また、工作物の所有者としての責任は、占有者が免責された場合の二次的・交替的な責任であるから、所有者と占有者らが共同不法行為責任を負うことはありえない等と主張して争いました。
一方、賃借人らは、排水口の掃除をするよう注意されていたので、忠実にベランダの掃除をしていたのであり、本件事故の原因は、所有者が排水口の上に構築されていたコンクリート製のサンルームを取り壊すことをせず、その構築物が排水口を塞ぎ、雨水を流れなくしてしまったことや排水管が腐蝕等により機能低下していたこと等にあり、その責任は所有者が負うべきであって、賃借人らには何らの責任もない等として争いました。
4.裁判所の判断
(1) 占有者の責任について
本件事故は、賃借人の代表者において排水口の塵芥を完全に除去していれば、すくなくともかかる大きな損害の発生を回避することができたことは明らかであり、階上の部屋の占有者である賃借人損害賠償責任があることは否定できないとしました。
また、民法717条1項の規定により損害賠償の責任を負うべき「占有者」とは、工作物を事実上支配し、その瑕疵を補習することができ、損害の発生を防止することができる関係にあるものを意味するから、賃借会社の代表者も、そのような地位にあったものであることが明らかであるので、同様に工作物の占有者としての責任を負うとしました。
(2) 所有者の責任について
本件事故の発生には、本件ベランダの構造が大きく影響を与えていることは否定できないところであり、本判決は所有者の責任については、次のとおり判断しました。
即ち、本件ベランダの東側の排水口は、サンルームの構築により塵芥の完全な除去が容易でない状況となっており、このため本件事故による損害が増大したことが認められる。
また、本件ベランダがタイル貼りのため底上げされ、そのため損害の発生が増大したのであるから、これのよる損害増大部分の責任を占有者に負わせることはできず、その部分は所有者がおわなければならない。
サンルームの構築、ベランダの底上げは、購入する以前の元の所有者がしたものであるが、それだからといって、事故発生当時の所有者の責任を否定することはできないとしました。
そして、所有者と占有者の両者の責任の関係については、占有者の負うべき損害部分と所有者が負うべき損害部分とを区分けすることができない以上、連帯して損害を賠償する義務があるとしました。
5. 漏水事故と相当因果関係の認められる損害の範囲
(1) 内装工事関係
本件漏水事故により、被害者らは天井・床の造り替え費用を支出した他、内装工事のための大工らとの打合せの際の大工らの弁当代や、打合せのための交通費を支出し、また、内装工事のための引越費用等を支出したため、それらの損害賠償を求めました。
本裁決は、これら内装工事に関して支出した費用のうち、畳表、壁紙、天井クロス等は、数年ごとに張り替えを要することは公知の事実であるから、事故と相当因果関係があると認められるのは予定の年数より支出を早められたことによる損害に限られる、としました。
(2) ホテルの生活関係
被害者らは、本件事故発生により、約2週間のホテル生活を余儀なくされ、ホテルでの宿泊料、食事、サービスの提供の料金等を支出しました。また、ホテルと自宅との往復等のタクシー代等を支出しました。
本判決は、ホテル生活を余儀なくされたことにとって支出したものは、本件事故と因果関係を否定することはできないが、ホテルでのマッサージ料金や喫茶料金等は相当因果関係を認めることはできないとしました。
(3) 家具類等関係
家具類等の再購入のための支出については、じゅうたん及び照明器具、衣服・履物等の消耗品については、漏水事故と相当因果関係がみとめられるのは、購入価格ではなく、事故当時の品物の時価ないし予定より早期に買い替え購入しなければならなくなったことによる損害に限られる、としました。
6. 所見
本判決は、相当因果関係の認められる損害の範囲について、内装工事のための打合せに臨む交通費、打合せの際の大工の弁当代、ホテル宿泊費用・外食代金等、具体的な損害について検討しており、また壁紙・天井クロス等の張替えや、照明器具や家具類の購入等については、その支出金額そのものではなく、予定より早期に購入しなければならなくなったことによる損害に限定されるとしており、参考になると思います。
なお、相当因果関係の認められる損害を実際に金額として算定するのはかなり困難な問題ですが、本判決は、通常の居住用マンションであるためか、請求額(現実の支出額)の8割ないし9割の金額を認容しています。
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