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■ 原マンション管理士事務所
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◎マンション管理問題判例
7.2 共同利益違反者に対する専有部分引渡し請求
弁護士 石川 恵美子 (石川恵美子法律事務所)
京都地方裁判所 平成10年2月13日判決
大阪高等裁判所 平成10年12月17日判決
1.事件のあらまし
マンションの一室が某宗教団体の信者に賃貸され、賃借人がその教団施設として使用したことが区分所有者の共同利益に反するとして、賃貸借契約の解除、専有部分からの退去請求が認められました。 争点及びその判断は次のとおりです
(1) 賃借人及び占有者は某宗教団体の構成員であるか
某宗教団体は解散したが、その出家者の会員は、活動内容や教団幹部との関係を見ると、実質上教団の一部を構成するものということができ、教団の構成員であると認められる。
(2) 使用態様は、個人の住居か、教団施設なのか
このマンションは、一部に店舗部分が存する他はすべて住居用である。この部屋には祭壇や賽銭箱が置かれ、教団のビデオや書籍、パソコン、ファックス、電話等を備え、居住が確認されていない多数の出家・在家信者らが出入りし、修行したり勉強会をひらいている。教団からは機関誌や食料が配布されてきている。そうするとこれは、個人的住居ではなく、教団の出家信者用集団居住施設として使用している。
(3) 某宗教団体の現在の危険性
教団は、強制捜査や解散命令、破産宣告等の相次ぐ障害により弱体化したとはいえ、その組織を維持しようとしていること、信者の元教祖に対する帰依は依然強固であること、危険な協議を破棄していないこと、犯罪事件に対する反省の気配もまったく見られないことを考えると、教団の危険性は無視しうるほどに減じていない。
(4) 共同利益違反行為をしたといえるか、それによる区分所有者の共同生活上の障害が著しいか、本訴以外に障害を除去できないか
この部屋への入居者以外に出入りの数は、通常の家族が住居として使用している場合には考えられないほど多く、かつ、深夜から未明にかけての時間帯の出入りが多く、防犯上きわめてこのましくない状況である。時間帯を問わない頻繁な人の出入りを招いている行為は、平穏かつ良好な居住環境を悪化させるものとして、共同利益背反行為にあたる。 また、この部屋は教団施設として使用されており、その危険性は無視できるほど減じてはいないので、使用行為自体が共同利益に背反するといえる。つまり、周囲の居住者に対して郷土の不安感や恐怖感等の心理的悪影響を及ぼす行為は、それが客観的な資料に基づいて、社会通念上受忍限度を超えるものと評価される限り、他の区分所有者の家庭生活を妨害するものとして、共同利益背反行為に含まれる。心理的妨害も物理的妨害も区分所有者の家庭生活を困難にすることに変わらない。共同利益背反行為による区分所有者の共同生活上の障害は著しく、占有移転禁止仮処分も守らない状況下では、他の方法ではその障害を除去することは困難である。
2.この判決の意義
共同の利益に反する義務違反行為として、従来行為類型別に次のように分けられていましたが、この判決は、宗教団体が区分所有者建物において宗教活動をした場合に、教団生活が、客観的資料に基づいて危険性が認められる限り、共同利益違反行為に該当することを認めたもので、今後類似の事例が起きたときに、十分参考になるものです。ただ、教団の性格の認定には十分すぎるほどの危険性の立証が必要でしょう。
従来の行為類型
(1)建物の不当毀損行為
換気装置を設置するために、建物の外壁に円筒型の開口部分を設けた(東京高判昭和53年2月27日)、ルーフテラスを改造してサンルームにした(京都地判昭和63年6月16日)等
(2)建物等の不当使用行為
例えば、廊下、階段や敷地等に私物を常時交通妨害になるように放置する、建物内に危険物や極端に重い物を持ち込む、使用目的が庭と定められている共有敷地を駐車場に改造(東京地判
昭和53年2月1日)、バルコニーの壁にパラボラアンテナを設置(東京地判平成3年12月26日)、住居専用部分を、専ら各種機械の取扱説明書、各種サービスマニュアル、パーツリストの企画、原稿作成、図面作成及び技術翻訳等を業務内容とする会社が事務所として使用(東京地八王子支判平成5年7月9日)等。
規約でその使用方法・使用目的を定めてあれば、それに反する行為の制止を無視して常時又は継続的に長期にわたって継続すれば、多くの場合共同利益違反になると認定される可能性が大きいようです。
(3)プライバシーの侵害ないしニューサンス(妨害)
専有部分内での騒音、振動、悪臭、有毒ガス放出、ペット飼育、迷惑営業の開業、真夜中のカラオケ営業(東京地決平成4年1月30日)、ベランダや自室内で野鳩に餌付け(東京地判平成7年11月21日)等。
(4)その他共同生活上の不当な行為
ガス爆発事故を発生させ、再度そのおそれが強い、専有部分を、売春行為や賭博開帳等犯罪行為や公序良俗違反の行為に使用、偏った性格の持ち主が他の区分所有者に暴力的行動を絶えずとり、他人に危害を及ぼし、又は及ぼすおそれが強い(東京地判平成8年5月13日)、暴力団構成員が専有部分を事務所として使用し、他の区分所有者に恐怖を与える等顕著な振舞いがある(裁判昭和62年7月17日、福岡地判昭和62年5月19日、札幌地判昭和61年2月18日、名古屋地判昭和62年7月27日等)、駐車中の車のタイヤの空気を抜く等他の区分所有者の使用に対して悪臭な妨害行為を繰り返す、長期間にわたる管理費の不払い等。
3.相談実務上の意義
マンション相談においても、最近はこの宗教団体だけでなく、新興宗教(ある宗教団体が、詐欺的に多額の金銭を騙し取ったとして告訴されトップグループが逮捕されたが、末端の指導者たちが詐欺的手法だけ真似してある地域だけ集中的に宗教活動類似行為をし多額の金を集めるケースがある。)の中には、マンションを信者の名前で居室使用ということで借用したら、実は集会場所として利用されてしまい、不特定多数の信者が常時マンション敷地内の勝手なところに車や自転車を複数駐車・駐輪し・エレベーターを信者集団が占領してマンション住人が乗れない場合がある。雰囲気が気持ち悪い、祈祷の声がやかましい、ろうそくやお香・線香を大量に使っているので火事の危険性が大きいうえ、においと煙が絶えず流れ出して布団や洗濯物に付着する等、住人がかなり日常生活にいらだつ場合が見受けられます。そのような宗教活動の拠点となったマンションでは、何度宗教活動を止めるように注意しても信仰の自由だと賃借人から反論されて困り果てているところもあり、区分所有者の中に複数の信者が住んでいると住民同士の対立も深刻であり、解決の糸口もつかめない場合があります。それでも粘り強く退去してほしいと交渉しているうちに、現在は中古の空きマンションが大量にあるような先例があれば、宗教活動だから自由だと標榜しているグループにも、交渉の際に大きなよりどころになります。
4.占有者の義務違反行為に対する措置
区分所有者法6条は、区分所有者相互間の権利義務を1、2項で、区分所有者以外の占有者の義務を3項で規定し、この占有者に関する義務違反行為に対する措置として、法57条4項と同60条をさだめています。
(1)この占有者とは誰を指すか
この占有者には、「専有部分の占有者」と規定されていることから、建物部分や付属建物(車庫を借りている)の占有者の他、その一部を占有している者(マンションの一住戸内の一部屋だけ借りている)を指しています。
一般に占有者には、専有部分の賃借人(転借人も含む。)以外に、使用借人、同居人、不法占拠者も含まれるとなれます。
そうすると、建物の共用部分や敷地を専用使用権に基づいて占有している者は、占有部分の占有者でないから、法46条2項を使って規約で対処したり、民法上の請求しかできないのかということが、問題となります。そのような場合は、共同生活の平穏さを維持するため、本条の占有者と同様に扱ってよいのではないかと考えます。
(2)この占有者の義務
建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関して区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはなりません。また、当然に建物又はその敷地もしくは付属施設の使用方法について、区分所有者が規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負っています(法46条2項)
(3)違反行為の停止、違反結果の除去、違反予防措置請求(法57条4項)
区分所有者全員又は管理組合法人が訴訟提起する場合は、集会の普通決議(法39条1項)によらなければなりません(形式的要件)。ただし、区分所有者全員が訴訟を遂行することは事実上不可能なので、管理者又は集会の決議で指定された区分所有者が他の区分所有者全員のために訴えを提起するのが通常です(法57条3項)
この占有者が、共同利益背反行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に訴えることができます(実体的要件)。
なお、この集会決議の際、この占有者は集会に出席して意見を述べることができるかという問題があります。占有者には区分所有者と異なり議決権がないため集会に出席して意見を述べる機会がないので、法44条1項の「会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合」にストレートに該当し、集会で意見が述べられると解します。法58条3項、法59条2項、法60条2項、の諸規定に対応する規定が法57条には存在しないことから、法57条1項の区分所有者相手の訴訟提起の集会決議には、区分所有者に弁明の機会を与えることを法律上要求されていないから、それとの均衡上否定するのは、否定するのは、形式的にすぎるでしょう。区分所有者には、議決権があり、集会に出席することはできるのであるから、この占有者がそこで意見を述べることも可能でしょう。ただ、それをしなかったからといって、決議が無効とはなりません。
(4)占有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその占有部分の引渡し請求(法60条)
この請求は、集会の決議に基づき、訴えをもってしなければならない形成の訴えです。請求の主体は、法58条と同一です。請求の相手方は、占有権限のある占有者であるときはその占有部分の区分所有者と占有者の両者であり、不法占拠者の場合は占有者のみです。本条の請求決議は、その「占有者の占有権を剥奪するものですから、4分の3以上の特別決議を要します。また、その集会においてその占有者には、弁明に機会を与えなければなりません(以上、形式的要件)。
では、その占有部分の区分所有者を共同被告とする場合に、準用される法58条3項の規定からその区分所有者にも弁明の機会を与える必要があるかに関しては、最高裁(前掲最判昭和62年7月12日)はその必要はないとしています。その理由は、原審(東京高判昭和61年11月17日)は、「弁明の機会は違反者たる占有者に与えれば足り、違反行為者でもなく、排除の対象者でもない区分所有者に弁明の機会を与える必要はない」と述べていますが、まさにそのとおりでしょう。
本条による請求が認められるためには、@共同利益背反行為、A@による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、B他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保やその他の区分所有者の共同生活の維持が困難であること(実体的要件)が必要とされます。
ここで取り上げた判例も、この実態的要件を厳格に解釈するため、某宗教団体の性格・現状にまで立ち入って詳細な事実認定を行っています。先に掲げた暴力団組長に対する事件や性格の偏った人間に対する事件についても、細かい事実を丁寧に一つひとつ認定し積み上げた結果、請求をみとめています。
その中で異質と思えるのが、やはり先に掲げた東京地裁八王子支部の判決です。この事件は、規約で「住戸は住戸として他の用途に供してはならない」とし、試用細則でも同様の定めがあります。賃借人は住戸を専ら事務所としてのみ使用し、専有部分内では代償以下2名が作業しているだけで、特に騒音や人の出入りも激しくありません。口頭弁論終結時まで継続していたのは、規約違反の事務所使用と占有者の無知に起因すると思われる管理組合無視の態度です。「住戸専用部分と店舗専用部分とを明確に区画している複合用途マンションでは、当初からその区画通りにしようされることにより、周囲の居住環境に変化をもたらす可能性が高いばかりでなく、管理規約の通用性・実効性管理規約に対する信頼を損なう、広く、他の規約違反を誘発する可能性さえある。」というのが主たる判断です。
他の事件におけるマンション住人の恐怖、嫌悪感、迷惑ぶりに比較すると、この程度で、区分所有者の共同生活上の障害が著しいといえるのか、甚だ疑問です。住人自治を重視して、規約に定めてあればかなりの蓋然性で本件請求が認められるとするならば、予防的にあらゆる場合を想定して、かつての学校の校則のような詳細に規約を設けたマンションが多数生まれるでしょう。しかし、人の住まいは本来緩やかな規制があって、臨機応変に事に対処することのできるのが理想のように思えます。
それに、規約の有無によって、「共同生活上の障害が著しい」ことの立証や判断に差を生ずるとしたら、それは少し論理に飛躍があるように思われます。やはり一つひとつ細かい事実の認定を厳格に行い、決議集会時と口頭弁論終結時に先のA、Bが存在することをきっちりと認定し、判断すべきとかんがえます。
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