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■ 原マンション管理士事務所
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◎マンション管理問題判例
7.1 ルール違反行為を重ねる賃借人
弁護士 奥川 貴弥(奥川法律事務所)
横浜地方裁判所 昭和61年1月29日判決
東京高等裁判所 昭和61年11月17日判決
最高裁判所 昭和62年7月17日判決
マンションの居住者として、好ましくない人はどんな人たちかと聞かれれば、暴力団関係者があげられるでしょう。もしそのような人がマンションに賃借人として居住し、他の居住者に迷惑をかけたとき、どのような手続きで追い出せるのでしょうか。
ここでは、この問題のリーディングケースであるマンション明渡事件(最判昭和62年7月17日、第一審横浜地判昭和61年1月29日、第2審東京高判昭和61年11月17日)を紹介しながら、この問題を考えてみましょう。
1.事件のあらまし
本件は、区分所有者が専有部分を暴力団組長に貸したところ、組関係者が出入りし、他暴力団との抗争問題もあって他の入居者にボディチェックをしたり、組員が婦女子をからかったり、また、ベランダに鳩小屋を設置、駐車場の無断使用、その他の不品行等ルール違反の行為が多数ありました。
2.区分所有法上の対応
そこで、このような場合の区分所有法上の対応について説明します。
マンションのように1棟の建物に多数の人が生活を営むと、相互に社会共同生活を営むと、相互に社会共同生活関係が生じ、それを維持するために区分所有者は、区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない(同法6条1項)ことは当然ですが、この点は、住んでいる人が、区分所有者であろうと、区分所有者から専有部分を貸借して居住している者であろうと同じことです。
そこで区分所有法は、右の義務に違反した賃貸人に対して、
@ 共同の利益に反する行為の停止等の請求(同法57条4項)
A 占有する専有部分の引渡し請求(同法60条)の措置を規定しました。
Aは、@の方法では障害を除去して共同生活の維持を図ることが困難な場合にとれる方法です。暴力団関係者に行為の停止を請求して大きな効果は期待できないので、結局専有部分の引渡し請求をすることになります。
次に、簡単にその手続きを説明します。
専有部分の賃借人その他の占有者の区分所有法6条1項違反による共同生活上の障害が著しく、先に述べた行為の停止等の請求によっては、その障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者間の共同生活の維持を図ることが難しい場合には、裁判によってのみ義務違反占有者の占有そのものを取り上げて同人を区分所有建物から排除することができます(同法60条1項)。
したがって、本件のように義務違反者が、専有部分の賃借人に弁明の機会を与えたうえで、集会の決議が必要であって、この決議は、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による決議です。(同法60条2項)。
また、管理者や集会で指定された区分所有者も、訴訟を担当させるという集会の決議があれば、右の裁判を起こすことができます(同法60条2項)。ただし、この集会決議は、区分所有者及び議決権の各過半数による決議です(同法26条4項)
3.裁判手続上問題となった事項
本件裁判で手続上問題となった点は、
@ 賃貸人にも弁明の機会を与える必要があるか
A 賃借人に対する通告書に記載されている違反行為の内容は具体性を欠き、
これに対する十分な弁明が不可能であるから、右通告書をもって弁明の機会を与えたことに
ならないのではないか
B 区分所有法60条1項の「他の方法によっては、その障害を除去して共用部分の利用の確保
その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難」な場合に該当するかの3点です。
@については、先に説明したように区分所有法上は、占有者である賃借人に弁明の機会をああたえればよいことになっています。しかし、実際上は、賃貸人も賃貸借契約が解除されることによって、賃料収入を失う等の不利益があり、賃貸人に弁明の機会を与える必要があるとの考えも成り立ちます。
前記の最高裁は「集会の決議をするには、同条(60条)2項によって準用される同法58条3項によりあらかじめ該当占有者に対し右契約に基づき右占有部分の使用、収益をさせている区分所有者に対して弁明する機会を与えることを要しないというべきである。」としました。
法律上は、賃借人に弁明機会を与えれば足り、該当占有者に対して弁明する機会を与えれば足り、該当占有者に対し弁明する機会を与えることを要しないというべきである。」としました。
法律上は、賃借人に弁明機会を与えれば十分ですが、実際の管理組合の運営としては賃借人の退去について努力しているのであれば、その状況を見てさらに賃貸人が自ら賃借人を退去させるように管理組合が指導することによって解決すれば、無用な手間が省ける可能性があるからです。
Aについては、前期の東京高裁判決によると、右通告書には「現在は、貴殿等と住民の間に大きなトラブルはなく、一応の小康状態を保つに至っております。しかし、この状態は3月5日の県警本部長への要望及び合同記者会見、それに続く3月6日からの警察による警備強化が実施された以降のことであり、遺憾ながら貴殿等の自主的措置の結果ではなく、したがって一時的な沈静状態と断ぜざるを植えません。<中略>また、本質的な問題として、当マンションがA組とB会の抗争の戦場になるといった具体的危険が現に存在しており、当組合としてはこれ以上問題を座視するわけには参りません。<中略>具体的には、3月25日の理事会決議にのっとり、貴殿に対し、建物の区分所有等に関する法律60条に基づき、302号室の即時引き渡しを請求いたします。」と記載されており、これで十分としました。
しかし、管理組合としては、違反行為を個条書にする等具体的に記載することによって、問題点を明確にするほうがよりよいことはいうまでもありません。
Bについては、東京高裁は、「控訴人Xは広域暴力団A組系C組の組長であり、その身分には常に暴力的抗争の生ずる危険性が存在すること、控訴人X及びその関係者はこれまで本件建物居住者の共同生活に種々の障害を与えてきたことが認められ、右事実の本件建物は33戸の専有部分からなる住居専用のマンションであることに鑑みると、そこに暴力団の幹部が居住し、常時暴力団員が出入りすることはマンション居住者の日常生活に著しい障害を与え、マンション居住者にとっては耐え難いものであると認められる。」 としました。この点は当然と思います。
4.居住者の一致協力が高く評価される
本件は、マンションの住民が一致協力して暴力団関係者の追出しに成功したものとして、高く評価されるべきだと思います。というのは、もしこのまま放置しておいたならおそらく次々と住民はマンションを売却する等して移転をしたであろうと想定されるからです。
その場合は、当然のことながらマンションの価格は下落し、投売りするしかありません。得に最初に売り出した人より後から売り出した人のほうが下落率が大きく、損をすることが予想され、早いもの勝ちということになりかねません。それでも移転できる人はよいでしょうが、子供の学校や経済的理由で残るより仕方のない人も出てくるでしょう。
このような事態にならないようにするためには、マンションの住民一人一人が自分のもっているマンションの生活環境を保持することが、マンションの資産価値を守り自分の生活を守るという自覚がなければなりません。そのためには、住民の集団意識がなければなりませんので、日頃から管理組合の運営に皆が参加するような態勢をつくっておくことが必要でしょう。
本件は、他の方法によっては共同生活の維持が困難な場合の適用例を示した点に意味があります。
しかし、他にどのようなときに適用されるかは個々の具体的ケースによって判断するほかありません。したがって、本件のような訴えを提起するときは専門家に相談したほうがよいでしょう。
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